合同会社の持分全部譲渡による変更登記
合同会社の持分全部譲渡による変更登記
合同会社については、まだ制度ができて歴史が浅いこともあり、あまり文献が無くて苦しみましたので、備忘録として書きます。。色々と調べましたが、私見も多く含まれてます。
先日、代表社員A1名の合同会社の代表社員をB1名に変更したいとのご依頼がありまして、、、色々と調べまして、そもそもBが社員に加入するには、Bに出資してもらうか、Aから持分譲渡を受ける必要があります。今回は、Aが役員から抜けるとのことで、AからBに持分の全部譲渡を行うコトになりました。
登記の事由の書き方すらあまり文献にも記載が無かったのですが、商業登記ハンドブックを参考にして、「業務執行社員の退社及び加入、代表社員の変更」としました。
そこまでは特に問題は無かったのですが、会社法585条1項により、持分譲渡の実体法上の要件として他の社員全員の承諾が必要になります。今回はA以外に社員がいないので承諾は不要でしたが、登記の添付書類である「加入の事実を証する書面」で思考グルグルの渦にハマってしまいました。。。
商業登記ハンドブック(第4版)P660によると、「加入の事実を証する書面」とは、
持分の譲受けによる加入の場合には、原則として、持分の譲渡契約書及び定款の変更に係る総社員の同意を証する書面(平18.3.31民商782号通達)。なお、持分の譲渡契約書については、総社員の同意書の記載から加入の事実が明白であり、かつ、加入する社員の記名押印もある場合には、登記実務上、添付を省略することができるとされている(書式精義第6版下935頁)。
よく分からない。。。
かなり考えましたが、結局は、「加入の事実を証する書面」とは、「持分譲渡の事実を証する書面」と「定款変更に係る総社員の同意書」に分解することができ、
「持分譲渡の事実を証する書面」とは持分の譲渡契約書のことで、
「定款変更に係る総社員の同意書」はあくまで定款変更の立証であって持分譲渡の立証ではないので、その時点ではまだ社員になっていないBの記名押印は不要と考えました。
そして、なお書き部分については、「定款変更に係る総社員の同意書」の記載から、持分譲渡について他の社員全員の承諾を得ており(同意書に他の社員全員の記名押印がある)、かつ、持分譲渡契約がなされている(AとBの記名押印がある)と明らかな場合は、「持分譲渡の事実を証する書面」を省略することができるという理論構成をしました。「定款変更に係る総社員の同意書」の記載から実体上の要件を満たしていることが明白であれば、登記手続上、契約書等の実体上の書面は不要だという考えですね。
法務省の同意書の雛形
↓
同意書
1 当会社の業務執行社員▲▲▲▲は、その持分全部を▢▢▢▢に譲渡して退社し、これを譲り受けた▢▢▢▢は、同時に業務執行社員として加入すること。
新加入社員の氏名及び住所並びに出資の目的及び価額は、次のとおり。
〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
1 金〇円 全部履行 有限責任社員▢▢▢▢
1 定款第〇条中、有限責任社員▲▲▲▲の項を削除し、有限責任社員△△△△の次に次の1号を加えること。
5 金〇円 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号 有限責任社員▢▢▢▢
1 定款第〇条を次のように改める。
第〇条 社員△△△△及び▢▢▢▢は、業務執行社員とし、当会社の業務を執行するものとする。
以上に同意する。
令和〇年〇月〇日
〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
〇〇合同会社
業務執行社員△△△△
同 ▲▲▲▲
社 員〇〇〇〇
同 〇〇〇〇
加 入 社 員▢▢▢▢
多分一番上の1が、持分譲渡契約があったよーってことと、合同会社では出資の全部履行が無いと社員となることができないので念のため「全部履行」と書いている(すでにAが業務執行社員として登記されているので全部履行の事実は明白だと思うが。)のかなぁと思います。
一番下の1のところは、Bを業務執行社員とする旨の定款規定があることを示すため定款改定をしていると思われます。
以上、合ってるかどうかは分かりませんが、私の考察日記でした。
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プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸