離婚に伴う財産分与が以下の 2要件を満たす場合には、形式的に財産権の移転が行われることはあっても、当然の所有権の帰属を確認する趣旨にすぎず、これによって実質的に財産権の移転が生じるものではないため、不動産取得税は課税されません。
★ 要件1 その財産分与が、実質的に夫婦の共有財産の分割と認められるものであること。
★ 要件2 その財産分与が、婚姻中の財産関係を清算する趣旨のものであること。
しかし、これ以外の財産分与の場合には、「これによって実質的にその不動産所有権の移転が生じる」として不動産取得税が課税されます(東京地裁昭和45年9月22日判決、大阪高裁昭和51年1月27日判決、東京都「不動産取得税課税事務提要(平成30年3月30日改正)」)。
<具体例>
★ 婚姻期間中に夫婦で取得した不動産(登記名義:夫100%)を、財産分与により妻が取得した。
→ 夫婦が協力して築いた婚姻中の財産関係の清算を目的として行われた財産分与(清算的財産分与)に該当すれば、不動産取得税は課税されない。
★ 婚姻期間中に夫婦で取得した不動産(登記名義:夫1/2、妻1/2)の夫の持分1/2を、財産分与により妻が取得した。
→ 夫婦の共有持分割合が登記上明示されており、民法の規定により共有と推定される「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」ではないため、不動産取得税が原則課税される(ただし、財産分与を受けた不動産に妻が居住するときには、既存住宅(中古住宅)を取得した場合の不動産取得税の軽減措置を受けられることが多いので、不動産取得税が問題になることは少ないと思われます)。
いずれにせよ、移転登記をすると、府税事務所から取得者に不動産取得税の申告書が送られてきます。
申告書が届いたら、清算的財産分与である場合は府税事務所に連絡してその旨を告げて必要書類を送るか、軽減措置を受けるための必要書類を添付して申告するか、のいずれかの対応が必要になります。
司法書士 山森貴幸