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株主総会の出席役員が記名押印を拒否した場合

会社法においては、議長、出席役員、議事録作成者 の記名は必要ですが、署名や押印は不要です。

ただし、定款に次のような規定がある場合、署名や押印が必要になります。
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第〇条(株主総会議事録)
株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、その経過の要領及び結果等を記載又は記録した議事録を作成し、議長、議事録の作成に係る職務を行った取締役及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名を行う。


そこで、登記手続における【出席役員が記名押印を拒否した場合の取扱い】について、次のような先例等があります。
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★ 株主総会の議事録に出席取締役のうちの1名が記名捺印しない場合は、当該取締役の記名捺印を受けられない事情を付した 代表取締役の上申書 又は 他の出席取締役全員からの上申書 を添付させるのが相当である(昭和38・12・18民四313号回答)。

★ 定時株主総会において再選されなかった取締役が議事録への署名を拒否した場合には、議事録作成者が 署名を拒否する取締役の氏名署名しない理由議事録に付記し、他の出席取締役の署名がある総会議事録を添付すれば登記の申請は受理される(藤島紀子「出席取締役の総会議事録への署名拒否と登記申請」旬刊商事法務1056号40頁)。

これらは、議事録を有効なものとして登記手続を進めるための根拠となるものであり、
実体法上これを覆すためには、決議取消しの訴えを提起する必要があります。
ただし、定款違反を理由とする決議取消しの訴えは、招集手続、決議方法 又は 決議内容 に違反が存在しなければならず、さらに、仮に訴訟提起ができたとしても、会社法831条2項により、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁量で請求を棄却することができることから、実際問題として決議取消しを主張することは難しいのではないかと考えます。
ちなみに、決議取消しの訴えの提訴期間は決議の日から3か月です。

司法書士 山森貴幸

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