権利義務代表取締役についての会社法の条文
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(代表取締役に欠員を生じた場合の措置)
第351条 代表取締役が欠けた場合又は定款で定めた代表取締役の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有する。
★ 任期満了について
一般的に代表取締役独自の任期満了は考えられない。
なので、取締役の任期満了に伴う退任のことを指す。
★ 辞任について
代表取締役のみの辞任と
取締役の辞任に伴う退任のことを指す。
ここで、任期満了又は辞任により退任した取締役がそもそも権利義務取締役にならなければ権利義務代表取締役とはならない。
取締役会設置会社で、取締役ABC、代表取締役Aのケース。
9月30日の定時株主総会でABC任期満了退任するので再選決議、席上就任承諾。
10月3日の取締役会でAを代表取締役に再選決議、席上就任承諾。
9月30日の定時株主総会終結時から10月3日の取締役会再選決議就任承諾までの間、Aは代表取締役としての権利義務を有する否か。
仮に、9月30日の定時株主総会で取締役が誰も選任されなかった場合、Aは任期満了退任ではあるが権利義務取締役となり、なお取締役としての権利義務を有することから、代表取締役の前提資格を喪失していない。よって、権利義務代表取締役に該当する。
本題として、本事例では、9月30日の定時株主総会終結時に、ABCは任期満了退任と同時に取締役に就任しているので、代表取締役Aは、代表取締役の前提資格の喪失により退任し、権利義務代表取締役とならない。よって、9月30日から10月3日までは代表取締役は不在で選任懈怠の問題が生じる。(商業登記ハンドブック 4版 P419、420参照)
参考までに、事例で学ぶ会社法実務 P202-203
午前中の株主総会で取締役ABCが重任し、午後開催の取締役会で代表取締役Aを再選し再任した場合、代表取締役の前提たる取締役の地位は午前中に失われ、Aは代表取締役の権利義務者でもなかったわけですから、重任の定義に反しないのでしょうか。
⇒ 代表取締役の取締役退任時期と再任時期との時間差は、やむを得ないものであり、登記上は、同日をもって同時と取り扱いますから、重任で問題ない。
cf. 権利義務代表取締役になるか否かの基本
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京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸