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普通借家契約の更新(3パターン)

今回は、建物の賃貸借契約についての記事です。

居住用の建物だけでなく、営業用に借りる店舗も、借地借家法の適用を受けます。
(以下、借家契約と呼んでいるのは、普通借家契約のことです。)

期間の定めのある普通借家契約の更新には、
① 合意更新
② 自動更新(合意更新の一種)
③ 法定更新
の3つがあり、②と③の区別が非常に重要です。

② 自動更新の条項は、契約書に
第2条 賃貸借の期間は、年月日から年月日までの2年間とする。
2 前項の賃貸借期間は、甲又は乙が期間満了の6か月前までに相手方に対して書面にて更新しない旨の通知をした場合を除き、2年間更新され、以後も同様とする。

などと記載されます。

そもそも借家契約は、この自動更新条項が無くても、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。この法律の規定に従って認められる更新を ③ 法定更新 といいますが、自動更新条項がある場合、契約は当該条項に従って更新され、法定更新ではなく、② 自動更新ということになります。

(建物賃貸借契約の更新等)
借地借家法 第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。


違いは、更新後の賃貸借期間に表れます。
③ 法定更新の場合、更新後の契約には期間の定めがないことになるのに対し(借地借家法26条1項本文ただし書)、② 自動更新の場合、当該条項に更新後の賃貸借期間の定めがあるときは、その定めに従うことになります。

期間の定めがない場合、借主・貸主の双方、いつでも解約の申入れをすることができ、

★ 借主は、民法617条1項に基づき、解約申入日から3か月(短縮も延長も有効、借地借家法の適用外のため)経過することによって、
★ 貸主は、借地借家法27条1項に基づき、解約申入日から6か月(短縮は無効・延長は有効、正当事由が必要(借地借家法28条))を経過することによって、

契約を終了させることができます。

(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
民法 第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日

(解約による建物賃貸借の終了)
借地借家法 第27条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。


期間の定めがある場合、賃貸借期間内は、借主・貸主の双方とも、一方の都合による中途解約はできないのが原則です(※合意解約は当然可能)。
  ↓
【参考】最判昭48.10.12
裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

ただし、賃貸借契約に中途解約特約(期間の途中で解約できる旨の特約)がある場合には、その特約に従って解約が可能です(民法618条)。

中途解約特約における解約予告期間は、

★ 借主は、民法617条1項に基づき、3か月(短縮も延長も有効、借地借家法の適用外のため)、
★ 貸主は、借地借家法27条1項に基づき、6か月(短縮は無効・延長は有効、正当事由が必要)です。

(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
民法 第618条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。


借地借家法27条は、期間の定めのある建物賃貸借については適用されません(期間の定めのない賃貸借において、賃貸借を終了させることを「解約」というので)が、中途解約特約がある期間の定めのある建物賃貸借には適用があります。

※ 本ブログは私見を含んでおりますのでお問い合わせは一切受け付けません。

プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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