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債務がある場合の遺留分の計算

法定相続人が、子ABの2名
Aに全ての財産を相続させる旨の遺言書あり。
プラスの財産1億円、マイナスの財産(債務)6,000万円
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まず、遺留分の計算をするにあたって、基礎財産の算定は、プラスの財産のみならずマイナスの財産である債務も考慮する。
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民法(遺留分を算定するための財産の価額)
第1043条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
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次に、相続債務が可分債務の場合、原則としては、ABが法定相続分に応じて債務を承継するのでBは法定相続分に応じた債務を承継することとなり、遺留分の計算にあたって、遺留分の不足額に承継した債務額を加算(プラス)することになるが、今回のケースでは、Aに全財産を相続させる旨の遺言があり相続債務についてもAが承継することとなるので、Bは、法定相続分に応じた相続債務額を加算して請求することはできない。
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(平成21年3月24日判例)
 相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合、遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り、当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり、これにより、相続人間においては、当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。
 もっとも、上記遺言による相続債務についての相続分の指定は、相続債権者の関与なくされたものであるから、相続債権者に対してはその効力が及ばないものと解するのが相当であり、各相続人は、相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには、これに応じなければならず、指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできないが、相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し、各相続人に対し、指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられないというべきである。
 そして、遺留分の侵害額は、確定された遺留分算定の基礎となる財産額に民法1028条所定の遺留分の割合を乗じるなどして算定された遺留分の額から、遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し、同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定すべきものであり、その算定は、相続人間において、遺留分権利者の手元に最終的に取り戻すべき遺産の数額を算出するものというべきである。したがって、相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ、当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合、遺留分の侵害額の算定においては、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ、これに応じた場合も、履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず、相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまるものというべきである。
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よって、総体的遺留分は法定相続分の2分の1なので、Bの個別的遺留分は4分の1なので、
基礎財産額4,000万円 ✕ 1/4 = 1,000万円

(Bが相続債務を法定相続分で承継する場合。今回は無関係)
4,000万円 ✕ 1/4 + 承継債務額(6,000万円 ✕ 1/2)=4,000万円
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ちなみに、遺言による相続債務についての相続分の指定は、相続債権者の関与なくなされたものであるので、相続債権者に対してはその効力が及ばない。なので、相続債権者は、相続人全員に対して、法定相続分に従った相続債務の履行を求めることができ、相続債権者から法定相続分に従った相続債務の請求がなされる可能性がある。
よって、債権者と他の相続人と調整をして、債権者との間で免責的債務引受契約をすれば、他の相続人は相続債務の支払いを免れることができる。
なお、遺留分権利者が、相続債権者からの請求に応じて相続債務を支払ったとしても、遺留分侵害額の計算には加算できないが、債務を承継した特定の相続人(遺言で指定された全財産を相続する人)に対して、支払った債務の額を求償することができる。
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(債務超過の場合の遺留分)
遺留分の基礎財産額が、ゼロ 又は マイナス の場合、原則として、遺留分侵害額請求はできない。
ただし、実体のない債務を除外したり、相続財産の評価方法を検討するなどの方法によって、遺留分侵害額請求が認められるケースもあるそうです。

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プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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