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新設分割で調べたこと

新設分割とは、一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう(会社法2条30号)。

新設分割によって設立会社は対価を交付することになるが、対価を誰に交付するかによって、分社型新設分割(物的分割)分割型新設分割(人的分割、スピンオフ)に分類される。

分社型新設分割では、対価を分割会社が受け取り、分割型新設分割では、対価を分割会社の株主が受け取る。

会社法では、分社型新設分割のみを規定しており、分割型新設分割は、分社型新設分割+剰余金の配当という方法による。なお、分割型新設分割をする場合、財源規制が課されないので(会812)、分割会社における債権者保護が問題となり、全ての債権者に対する債権者保護手続を義務付けている。

新設分割では、分割会社の株式を承継の対象に含めることはできず、また、分割会社の新株予約権に関する義務も設立会社に承継させることはできない。(会763Ⅰ⑤、会社分割ハンドブック P195)

新設分割に際して株式を発行することが必要であり、対価として、株式に加えて、社債、新株予約権、新株予約権付社債を交付することは認められているが(会763Ⅰ⑧)、それら以外の金銭その他の財産の交付は認められていない。したがって、たとえば、割当比率の調整等のためでも金銭を交付することはできない。(同 P123、128)
新設分割の場合の対価は、①株式、②社債、③新株予約権、④新株予約権付社債のいずれかに限定されており、それ以外のものを対価とすることはできない。また、新設分割の場合、株式については「交付する」と規定されており、設立会社の株式は必ず交付する必要がある。(同 P196)

設立会社の株式を対価とすることが税務上の適格分割の要件の1つとされており、対価として株式以外のものを用いる場合は、税務上、適格分割とならない。(同 P127)
設立会社の株式以外の資産が少しでも分割対価に含まれれば、適格分割の要件は満たされないことになり、例外は一切認められない。なお、分割型新設分割の場合、分割対価は分割会社の各株主の持株割合に応じて交付されることも、適格分割の要件において要求される。(同 P692)

会社法 第763条(株式会社を設立する新設分割計画)
一又は二以上の株式会社又は合同会社が新設分割をする場合において、新設分割により設立する会社が株式会社であるときは、新設分割計画において、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式会社である新設分割設立会社の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
二 前号に掲げるもののほか、新設分割設立株式会社の定款で定める事項
三 新設分割設立株式会社の設立時取締役の氏名
四 次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項
イ 新設分割設立株式会社が会計参与設置会社である場合 新設分割設立株式会社の設立時会計参与の氏名又は名称
ロ 新設分割設立株式会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 新設分割設立株式会社の設立時監査役の氏名
ハ 新設分割設立株式会社が会計監査人設置会社である場合 新設分割設立株式会社の設立時会計監査人の氏名又は名称
五 新設分割設立株式会社が新設分割により新設分割をする会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務(株式会社である新設分割会社の株式及び新株予約権に係る義務を除く。)に関する事項
六 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の株式の数又はその数の算定方法並びに当該新設分割設立株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項
七 二以上の株式会社又は合同会社が共同して新設分割をするときは、新設分割会社に対する前号の株式の割当てに関する事項
八 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項
イ 当該社債等が新設分割設立株式会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ロ 当該社債等が新設分割設立株式会社の新株予約権であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ハ 当該社債等が新設分割設立株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項
九 前号に規定する場合において、二以上の株式会社又は合同会社が共同して新設分割をするときは、新設分割会社に対する同号の社債等の割当てに関する事項
十 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該新設分割設立株式会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権についての次に掲げる事項
イ 当該新設分割設立株式会社の新株予約権の交付を受ける新設分割株式会社の新株予約権の新株予約権者の有する新株予約権の内容
ロ 新設分割計画新株予約権の新株予約権者に対して交付する新設分割設立株式会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ハ 新設分割計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、新設分割設立株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
十一 前号に規定する場合には、新設分割計画新株予約権の新株予約権者に対する同号の新設分割設立株式会社の新株予約権の割当てに関する事項
十二 新設分割株式会社が新設分割設立株式会社の成立の日に次に掲げる行為をするときは、その旨
イ 第171条第1項の規定による株式の取得(同項第一号に規定する取得対価が新設分割設立株式会社の株式のみであるものに限る。)
ロ 剰余金の配当
(配当財産が新設分割設立株式会社の株式のみであるものに限る。

会社分割に際して、当事者となる会社の株主でこれに反対する者は、当該会社に対して自己の有する株式を「公正な価格」で買い取ることを請求できる。株主がこの買取請求権を行使する機会を確保するために、会社分割の当事者となる会社には株主に対する通知または公告をする義務が規定されている(会806ⅠⅢⅣ)。

「株主総会の決議の日から2週間以内」とされているのは、通知等を株主総会決議後にすることを必要とする趣旨ではないとされており、株主総会決議より前に株式買取請求手続を開始することはできる。なお、通知の方法に制限はない。(同 P292)

会社分割の際の株式買取請求にかかる自己株式の取得については、分配可能額による財源規制はない。(同 P301)

第806条(反対株主の株式買取請求)
新設合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
一 第804条第2項に規定する場合
二 第805条に規定する場合 ← 簡易新設分割の分割会社の場合
2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。
一 第804条第1項の株主総会に先立って当該新設合併等に反対する旨を当該消滅株式会社等に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該新設合併等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
3 消滅株式会社等は、第804条第1項の株主総会の決議の日から2週間以内に、その株主に対し、新設合併等をする旨並びに他の新設合併消滅会社、新設分割会社又は株式移転完全子会社及び設立会社の商号及び住所通知しなければならない。ただし、第1項各号に掲げる場合は、この限りでない。
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 第1項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、第3項の規定による通知又は前項の公告をした日から20日以内に、その株式買取請求に係る株式の数を明らかにしてしなければならない。
6 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、消滅株式会社等に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第223条の規定による請求をした者については、この限りでない。
7 株式買取請求をした株主は、消滅株式会社等の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。
8 新設合併等を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。
9 第133条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。

設立会社の資本金の額は、株主資本等変動額の範囲内で、分割会社が新設分割計画の定めに従い定める必要がある。

第445条(資本金の額及び準備金の額)
5 合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転又は株式交付に際して資本金又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める。
会社計算規則 第49条(単独新設分割の場合における新設分割設立会社の株主資本等)
新設分割設立会社の設立時における株主資本等の総額は、新設型再編対象財産の新設分割会社における新設分割の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法(当該新設型再編対象財産に時価を付すべき場合にあっては、新設型再編対価時価又は新設型再編対象財産の時価を基礎として算定する方法)に従い定まる額(次項において「株主資本等変動額」という。)とする。
2 前項の場合には、新設分割設立会社の資本金及び資本剰余金の額は、株主資本等変動額の範囲内で、新設分割会社が新設分割計画の定めに従いそれぞれ定めた額とし、利益剰余金の額は零とする。ただし、株主資本等変動額が零未満の場合には、当該株主資本等変動額をその他利益剰余金の額とし、資本金、資本剰余金及び利益準備金の額は零とする。
第50条(株主資本等を引き継ぐ場合における新設分割設立会社の株主資本等)
前条の規定にかかわらず、分割型新設分割の新設型再編対価の全部が新設分割設立会社の株式又は持分である場合であって、新設分割会社における新設分割の直前の株主資本等の全部又は一部を引き継ぐものとして計算することが適切であるときには、分割型新設分割により変動する新設分割会社の資本金、資本剰余金及び利益剰余金の額をそれぞれ新設分割設立会社の設立時の資本金、資本剰余金及び利益剰余金の額とすることができる。

債権者保護手続について、債権者異議手続中または異議申述期間経過後に生じた債権は、不法行為債権者および債権者異議手続開始時点で会社に知れている場合を除き、対象に含まないと考えられる。(同 P309)

分割会社の変更登記の添付書面は、委任状のみ。

商業登記法 第87条
吸収分割会社又は新設分割会社がする吸収分割又は新設分割による変更の登記の申請は、当該登記所の管轄区域内に吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の本店がないときは、その本店の所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
2 前項の登記の申請と第85条又は前条の登記の申請とは、同時にしなければならない。
3 第一項の登記の申請書には、第18条の書面を除き、他の書面の添付を要しない。

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京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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