債務不履行責任について
債務不履行責任について
債務不履行とは、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき 又は 債務の履行が不能であるときをいう(民415Ⅰ)。
債務の本旨に従った履行をしないときとは、履行遅滞、不完全履行を指す。
債務の履行が不能であるときとは、履行不能を指す。
履行不能の場合
① 履行請求は不可(民412の2Ⅰ)
② (債権者に帰責事由が無ければ)無催告解除が可能(民543、542Ⅰ①)
③ 債務者に帰責事由があれば、債務の履行に代わる損害賠償(塡補賠償)請求が可能(民415Ⅰ、Ⅱ①)
履行遅滞の場合
① 履行の強制を裁判所に請求可能(民414Ⅰ)
② (債権者に帰責事由が無ければ)催告解除が可能(民543、541)
③ 債務者に帰責事由があれば、損害賠償(遅延賠償・塡補賠償)請求が可能(民415Ⅰ、Ⅱ③)
<注意点>
・ 債務者が、自己に帰責事由のないこと(免責事由)の立証責任を負う。
・ 損害賠償請求するには、債権者が、損害の発生及び賠償額の立証責任を負う。
・ 遅延賠償とは、履行の遅延を理由とする損害賠償(本来の履行と併せて請求される損害賠償)のことで、履行遅滞の場合に問題となる。
・ 塡補賠償とは、債務の履行に代わる損害賠償のこと。
・ 免責条項は、原則として有効。
(履行不能)
第412条の2 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
(履行の強制)
第414条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
(催告による解除)
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。
(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
金銭債務の場合
① 常に履行遅滞となり、履行不能は認められない。
② 金銭債務の不履行の場合、利息分の損害は常に発生し、かつ、それ以上の損害は生じないとみなすので、債権者は、履行遅滞の事実を証明すれば足り、損害額の証明は不要。
③ 金銭債務の不履行における損害賠償について、債務者は不可抗力を抗弁とすることができないので、債務者は帰責事由の有無にかかわらず、常に損害賠償責任を負う。
(金銭債務の特則)
第419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
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司法書士 山森貴幸