相続放棄者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときに限り、相続財産の保存義務を負う。相続放棄者が管理に一切関与していない相続財産についてまで保存義務を負うとするのは、相続による不利益を回避するという相続放棄の制度趣旨に反する一方、相続財産を現に占有する者であっても一切の保存義務を負わないとすると、管理不全となるリスクを放置することになるから、当該財産を引き継ぐまでは保存義務を負担することに合理性がある。
法定相続人全員が相続放棄をした結果、次順位の相続人が存在しない場合には、相続財産清算人を選任し、その相続財産清算人に引き渡すまでの間、相続放棄者は保存義務を負う。
相続放棄者は、相続財産を滅失・損傷する行為をしてはならないという意味での保存義務を負う(相続財産の管理をする義務までは負わない)。以上、完全択一六法 P765-766
(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
2 第645条、第646条並びに第650条第1項及び第2項の規定は、前項の場合について準用する。
(相続財産の清算人の選任)
第952条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
(受任者による報告)
第645条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
(受任者による受取物の引渡し等)
第646条 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
(受任者による費用等の償還請求等)
第650条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
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司法書士 山森貴幸