信託法条文 第二章 信託財産等
信託法条文 第二章 信託財産等
(信託財産に属する財産の対抗要件)
第14条 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。
(信託財産に属する財産の占有の瑕疵かしの承継)
第15条 受託者は、信託財産に属する財産の占有について、委託者の占有の瑕疵かしを承継する。
(信託財産の範囲)
第16条 信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産のほか、次に掲げる財産は、信託財産に属する。
一 信託財産に属する財産の管理、処分、滅失、損傷その他の事由により受託者が得た財産
二 次条、第18条、第19条(第84条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)、第226条第3項、第228条第3項及び第254条第2項の規定により信託財産に属することとなった財産(第18条第1項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定により信託財産に属するものとみなされた共有持分及び第19条の規定による分割によって信託財産に属することとされた財産を含む。)
第17条(省略)
第18条(省略)
第19条(省略)
(信託財産に属する財産についての混同の特例)
第20条 同一物について所有権及び他の物権が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第1項本文の規定にかかわらず、当該他の物権は、消滅しない。
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第2項前段の規定にかかわらず、当該他の権利は、消滅しない。
3 次に掲げる場合には、民法第520条本文の規定にかかわらず、当該債権は、消滅しない。
一 信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合を除く。)
二 信託財産責任負担債務に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合を除く。)
三 固有財産又は他の信託の信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合に限る。)
四 受託者の債務(信託財産責任負担債務を除く。)に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合に限る。)
(信託財産責任負担債務の範囲)
第21条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
一 受益債権
二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
四 第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権
五 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利
六 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属しないもののうち、次に掲げるものによって生じた権利
イ 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。ロにおいて同じ。)の規定により取り消すことができない行為
ロ 第27条第1項又は第2項の規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないもの
七 第31条第6項に規定する処分その他の行為又は同条第七項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利
八 受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利
九 第五号から前号までに掲げるもののほか、信託事務の処理について生じた権利
2 信託財産責任負担債務のうち次に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。
一 受益債権
二 信託行為に第216条第1項の定めがあり、かつ、第232条の定めるところにより登記がされた場合における信託債権(信託財産責任負担債務に係る債権であって、受益債権でないものをいう。)
三 前二号に掲げる場合のほか、この法律の規定により信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものとされる場合における信託債権
四 信託債権を有する者との間で信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の合意がある場合における信託債権
(信託財産に属する債権等についての相殺の制限)
第22条 受託者が固有財産又は他の信託の信託財産(第一号において「固有財産等」という。)に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務(第一号及び第二号において「固有財産等責任負担債務」という。)に係る債権を有する者は、当該債権をもって信託財産に属する債権に係る債務と相殺をすることができない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 当該固有財産等責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該信託財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該信託財産に属する債権が固有財産等に属するものでないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合
二 当該固有財産等責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該信託財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該固有財産等責任負担債務が信託財産責任負担債務でないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合
2 前項本文の規定は、第31条第2項各号に掲げる場合において、受託者が前項の相殺を承認したときは、適用しない。
3 信託財産責任負担債務(信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものに限る。)に係る債権を有する者は、当該債権をもって固有財産に属する債権に係る債務と相殺をすることができない。ただし、当該信託財産責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該固有財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該固有財産に属する債権が信託財産に属するものでないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合は、この限りでない。
4 前項本文の規定は、受託者が同項の相殺を承認したときは、適用しない。
(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)
第23条 信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができない。
2 第3条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。
3 第11条第1項ただし書、第7項及び第8項の規定は、前項の規定の適用について準用する。
4 前2項の規定は、第2項の信託がされた時から2年間を経過したときは、適用しない。
5 第1項又は第2項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法第38条及び民事保全法第45条の規定を準用する。
6 第1項又は第2項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。
第24条(省略)
(信託財産と受託者の破産手続等との関係等)
第25条 受託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、破産財団に属しない。
2 前項の場合には、受益債権は、破産債権とならない。信託債権であって受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものも、同様とする。
3 第1項の場合には、破産法第252条第1項の免責許可の決定による信託債権(前項に規定する信託債権を除く。)に係る債務の免責は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
4 受託者が再生手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、再生債務者財産に属しない。
5 前項の場合には、受益債権は、再生債権とならない。信託債権であって受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものも、同様とする。
6 第4項の場合には、再生計画、再生計画認可の決定又は民事再生法第235条第1項の免責の決定による信託債権(前項に規定する信託債権を除く。)に係る債務の免責又は変更は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
7 前3項の規定は、受託者が更生手続開始の決定を受けた場合について準用する。