社員の退社に伴う持分の払戻し
社員の退社に伴う持分の払戻し
業務執行社員 A、B
代表社員 A
法定退社事由である総社員の同意によって、Bが退社することとし、持分の払戻しを行う。
持分の払戻しにあたっては、まず財産目録及び貸借対照表を作成し、持分の払戻しに係る計算を退社の時を基準に行う(会611Ⅱ)。なお、財産目録及び貸借対照表に記載すべき会社財産の評価方法については、営業の存続を前提とする価額(営業価額)によるとするのが通説とされている。
持分払戻額は、
① 退社社員(B)の出資額(額面そのまま)
② 退社社員(B)に帰属する損益額(利益剰余金を持分割合で按分した額)
であり、
①は、資本金と資本剰余金(利益剰余金はダメ)で払い戻す。
②は、利益剰余金で払い戻す。
たとえば、資本金30、退社時の利益剰余金20とし、
Aの出資額:30
(内訳:資本金20、資本剰余金10)
Bの出資額:20
(内訳:資本金10、資本剰余金10)
とすると、
持分払戻額28(20(出資額)+8(利益剰余金20×2/5、単純計算))は、剰余金額40以下であるため、会社法635条による債権者保護手続は不要(持分払戻額が剰余金額を超えない場合、通常の利益配当と同様であるため(論点体系会社法4))であり、債権者保護手続の要否は、資本金の額を減少させるかどうかによって決する(627条)こととなる。
ちなみに、この場面における剰余金額とは、持分の払戻しをする日における資本剰余金の額と利益剰余金の額の合計額をいう。
各社員の出資につき計上している資本金と資本剰余金の具体的な内訳は、会社全体としての資本金の額の総額を変更しない限り変更可能であることから、
Aの出資額:30
(内訳:資本金30、資本剰余金0)
Bの出資額:20
(内訳:資本金0、資本剰余金20)
に振り替えを行うことで、Bに出資額(20)を払い戻しても、資本金の額は変わらないので、627条による債権者保護手続も不要となる。
つまり、退社社員の出資額を資本剰余金のみで賄いうる場合には、資本剰余金から払い戻すことで、債権者保護手続を回避することができる。(詳解合同会社の法務と税務 P107-111)
また、払い戻された利益剰余金部分(8)は、みなし配当となり、所得税の源泉徴収をする必要があり、払戻しを受けた社員にとっては、配当所得となります。
会社法
(出資の払戻し又は持分の払戻しを行う場合の資本金の額の減少)
第626条 合同会社は、第620条第1項の場合のほか、出資の払戻し又は持分の払戻しのために、その資本金の額を減少することができる。
3 第1項の規定により持分の払戻しのために減少する資本金の額は、第635条第1項に規定する持分払戻額から持分の払戻しをする日における剰余金額を控除して得た額を超えてはならない。
(債権者の異議)
第627条 合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。
第五款 退社に伴う持分の払戻しに関する特則
(債権者の異議)
第635条 合同会社が持分の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(持分払戻額)が当該持分の払戻しをする日における剰余金額を超える場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、持分の払戻しについて異議を述べることができる。
法人税法
(配当等の額とみなす金額)
第24条 法人の株主等である内国法人が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額は、第23条第1項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなす。
五 自己の株式又は出資の取得
所得税法
(源泉徴収義務)
第181条 居住者に対し国内において第23条第1項(利子所得)に規定する利子等(利子等)又は第24条第1項(配当所得)に規定する配当等(配当等)の支払をする者は、その支払の際、その利子等又は配当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。
2 配当等については、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日においてその支払があったものとみなして、前項の規定を適用する。
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司法書士 山森貴幸