民事信託は、信託財産を限定して行うものなので、全財産を信託することは現実的に不可能。
少なくとも、年金受給権は信託財産とすることができないので、年金収入は、信託口口座へ入金してもらうことはできず、委託者口座へ入金される。
委託者が年金収入で得た金銭を追加信託することも可能だが、信託の追加については信託法に明文の規定が無く、学説上、その法的性質は、新たな信託設定と信託の併合を同時に行うものと解されているため、委託者が意思能力を失えば、追加信託を行うことができなくなる。
cf. 信託の追加をするには?
信託財産としていない委託者の財産は通常の相続財産となるので、遺産分割ではなく承継先を決めておきたい場合は、遺言書を作成することになる。
<信託財産とすることができるか問題となるもの>
① 預貯金債権
一般に譲渡禁止特約が付されているので、そのまま信託財産とすることはできない。
委託者が預貯金を現金化して、金銭を信託することになる。
cf. 債権譲渡の対抗要件
預貯金債権に譲渡制限特約が付されている場合には、それが債権譲渡されたとしても、悪意又は重過失の第三者との関係では譲渡自体が無効となる。
② 農地(農地法3Ⅱ③により、不可)
③ 年金受給権(一身専属権なので、不可)
国民年金法
第24条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
厚生年金保険法
第41条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
委託者が自由に使える生活費等を委託者口座に残しておき、それ以外の金銭を、信託財産として信託口口座に移しておく。認知症になったことによる預金凍結リスクを防ぐ。
委託者が元気なうちは、本人・家族が、ATMで委託者口座から生活費を引き出す。
委託者が施設に入るときには、委託者口座を引落口座に設定し、残高が不足してきたら、信託金銭から補充する。
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プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸