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信託の清算と帰属権利者の指定

信託が終了すると、清算受託者(実務上、従来の受託者がそのまま継続して清算受託者になることがほとんど)のもとで信託の清算が行われます。
ただし、信託財産を換価し、債務を全部弁済するというような本来的な清算が行われることは稀であり、信託財産も信託財産責任負担債務も、現状のまま特定の者に帰属させるという処理が行われることが通常です。
cf. 信託終了時に清算を行うことは必須か

清算が行われた後の残余財産の給付を受けるのは、
①残余財産受益者又は帰属権利者 → ②委託者の相続人 → ③清算受託者
の先順位の者です。

基本的なところで注意しないといけないのは、
委託者兼受益者の死亡が信託の終了事由として信託契約に定められている場合、信託財産は委託者の財産からは外れているので、相続の対象とはなりません。
相続人である帰属権利者に対し、信託の清算に基づいて残余財産が給付されることがあったとしても、それはあくまで、信託契約に基づいて、信託財産が帰属権利者に対して給付されることになったものです。

信託契約において①の指定が無ければ、②委託者の相続人に残余財産が帰属することになりますが、相続人が複数の場合、その持分割合については、相続ではないので共有持分の割合の推定に従うのか、それとも法定相続分の割合に従うのか、信託法に規定が無く不明であり、遺産分割の対象ともならないと解釈せざるを得ない問題が生じます。

以上から、残余財産の帰属先については、必ず信託契約において明確に規定を置くのが望ましいです。

(清算受託者の職務)
第177条 信託が終了した時以後の受託者(清算受託者)は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 信託財産に属する債権の取立て及び信託債権に係る債務の弁済
三 受益債権(残余財産の給付を内容とするものを除く。)に係る債務の弁済
四 残余財産の給付
(清算受託者の権限等)
第178条 清算受託者は、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
(債務の弁済前における残余財産の給付の制限)
第181条 清算受託者は、第177条第二号及び第三号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第2項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただし、当該債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。
(残余財産の帰属)
第182条 残余財産は、次に掲げる者に帰属する。
一 信託行為において残余財産の給付を内容とする受益債権に係る受益者(残余財産受益者)となるべき者として指定された者
二 信託行為において残余財産の帰属すべき者(帰属権利者)となるべき者として指定された者
 信託行為に残余財産受益者若しくは帰属権利者の指定に関する定めがない場合には、信託行為に委託者又はその相続人を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなす。
 前2項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、残余財産は、清算受託者に帰属する。
(帰属権利者)
第183条 信託行為の定めにより帰属権利者となるべき者として指定された者は、当然に残余財産の給付をすべき債務に係る債権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

(清算受託者の職務の終了等)
第184条 清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者及び帰属権利者(受益者等)のすべてに対し、その承認を求めなければならない。

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プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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