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配偶者居住権の内容とその活用方法

配偶者居住権は、帰属上の一身専属権であり、帰属主体は法律上の配偶者に限定され、譲渡性は無く、相続の対象にもならない(相続により消滅する)。法的性質は賃借権類似の法定債権と考えられている。

配偶者居住権を取得した場合、その財産的価値に相当する金額を相続したものとして扱う。
たとえば、
相続財産:3,000万円の建物、2,000万円の預金
相続人:妻Bと子C(遺産分割協議で平等に取得する)
配偶者居住権の評価額が2,000万円、負担付所有権の評価額が1,000万円とすると、預金について、妻Bは500万円、子Cは1,500万円を取得することができる。
さらに、二次相続では、配偶者居住権は消滅して相続税の課税対象にならないので、2,000万円を相続税課税対象から外せる節税効果が見込める。

cf. No.4666 配偶者居住権等の評価|国税庁

遺言で、負担付所有権を唯一の子に、配偶者居住権を含むその他一切の財産を妻に相続させた場合、子の遺留分侵害額を圧縮することができるので、遺留分対策として活用することもできる。

(配偶者居住権)
第1028条 被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

(配偶者居住権の存続期間)
第1030条 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

(配偶者居住権の登記等)
第1031条 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。

(配偶者による使用及び収益)
第1032条 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2 配偶者居住権は、譲渡することができない。
3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
4 配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。

(居住建物の修繕等)
第1033条 配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3 居住建物が修繕を要するとき(第1項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
(居住建物の費用の負担)
第1034条 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)
第1036条 第597条第1項及び第3項、第600条、第603条並びに第606条の2の規定は、配偶者居住権について準用する。
(期間満了等による使用貸借の終了)
第597条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

<その他>
・配偶者居住権を特定財産承継遺言で取得することはできない。
⇒ 配偶者が配偶者居住権の取得を望まない場合にも、その取得を拒むことができず、相続放棄をするしかなくなり、かえって配偶者の利益を害するから。また、配偶者居住権の取得には一定の義務を伴うが、遺産分割方法の指定については負担を付すことができないから。

・建物の引渡しは対抗要件とはならず、登記が対抗要件となる。
・居住建物の使用収益に必要な限度でその敷地も利用することができる。
・配偶者の家族や家事使用人を居住建物に住まわせて使用させるために、居住建物の所有者の承諾を得る必要はない。
・死因贈与によっても配偶者居住権は成立する。
(死因贈与)
第554条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

・比較:配偶者短期居住権の条文
    ⇓
(配偶者短期居住権)
第1037条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利)を有する。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第3項の申入れの日から6箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第1項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
(配偶者による使用)
第1038条 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3 配偶者が前2項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
(配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅)
第1039条 配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する。

配偶者短期居住権は登記できないし、第三者対抗力がない。
配偶者短期居住権の取得によって得た利益は、具体的相続分に含まれない。

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プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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