募集株式発行(増資)と利益相反
募集株式発行(増資)と利益相反
株式申込人となるA株式会社の代表取締役である甲が、募集株式の発行をするX株式会社の代表取締役であるときは、利益相反取引にあたり、A株式会社において株主総会(又は取締役会)の承認を得る必要があると解されているが、商登法46条2項の規定は、登記申請人であるX株式会社の議事録についてしか適用がない上、承認がない場合の法律関係につき絶対的無効説をとる学説もほとんどないため、募集株式の発行による変更の登記の添付書面として、A株式会社の議事録の添付は要しないとされている。(昭61.9.10民四6912号、登研466)この場合、A株式会社に対する株式の割当てはX株式会社にとって利益相反取引とならない。(ハンドブック P284)
取締役会設置会社の株式会社甲(代表取締役A)では、募集株式発行を株主総会で決議し、甲の株主である株式会社乙(代表取締役A)と総数引受契約により資金調達をすることにした。契約書の当事者をみれば双方代理の関係にあることが即座に分かるが、募集株式の発行は、発行会社甲にとっては利益相反行為に該当しない。仮に、有利発行でも、有利発行で不利益を受けるのは会社ではなく既存株主であるところ、既存株主は株主総会決議で承認している。
これに対して、割り当てられる乙では、利益相反に該当する。甲の株式を売買で購入する場合と利益状況は同じだから。ただし、甲における募集株式発行の登記申請においては、乙で利益相反取引の承認があったかどうかは問われない。添付書面として要求する明文の規定がないからです。(基本論点 P131)
<現物出資を原因とする不動産登記関連>
取締役会設置会社であるA株式会社の代表取締役甲が同じく取締役会設置会社であるB株式会社の取締役でもある場合に、甲がA株式会社名義でB株式会社に不動産を現物出資してB株式会社の発行する募集株式を引き受ける行為は、A株式会社と甲の利益が相反する行為であるから、当該不動産の所有権移転登記の添付情報として、当該取引を承認したA株式会社の取締役会議事録を提供することを要する。
また、B株式会社については、当該現物出資を受け入れるに当たり、既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ないことから、B株式会社の取締役会議事録の提供を要しない。(登研755)
昭和30年10月12日福岡高裁判決は、現物出資が利益相反行為に該当するかどうかが争われた事案について、現物出資の場合は、出資者の氏名、目的物、その価格及び出資者に与えるべき株式の数を増資に関する株主総会で決議すべきものであり、既に総会の決議によって、このようなことが定められた以上、会社の利益保護のために設けられた旧商法265条(現会社法356条1項)の取締役会の承認手続を重ねて踏む必要はないとして、現物出資の履行行為は「取引」に当たらないことから、会社の取締役がした同会社の増資新株の引受け並びにその引受けに対する現物出資の履行行為については、旧商法265条の適用はないと判示しているが、甲が代表取締役であるA株式会社がB株式会社の募集株式を引き受ける行為は、募集株式の発行価額が不当に高い場合には、当然にA株式会社の利益を害することになり、発行価額以外にも、A株式会社がB株式会社の株式を引き受けること自体の利害得失を判断する上で考慮すべき事情は、いろいろあるものと考えられる。したがって、A株式会社がB株式会社の募集株式を引き受ける行為は、裁量によって会社の利益を害するおそれがあるというべきであり、会社法356条に規定する利益相反行為に該当すると考えられることから、取締役会の承認を要するものと解される。(登研799)
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京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸