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売主の契約不適合責任

不完全履行とは、一応債務の履行はされているが、履行の内容、方法などに不完全な点がある場合をいう。

① 給付物が契約と異なる物 ⇒ 契約で定めた物の引渡請求が可能
② 給付物の品質に契約不適合がある ⇒ 契約不適合責任(追完不可能なら履行不能に準じる)
③ 給付内容の不完全さのために拡大損害が生じた ⇒ 損害賠償請求が可能
④ 履行方法などの付随的な事項に不備 ⇒ 損害賠償請求が可能
⑤ 安全配慮義務違反 ⇒ 不法行為責任ではなく、債務不履行として損害賠償請求が可能

契約不適合は、債務不履行のうち不完全履行に該当するもので、

① 目的物の種類、品質、数量に関する契約不適合
② 権利に関する契約不適合

に分かれる。

種類に関する不適合 ⇒ 異なる種類の目的物が引き渡された
品質に関する不適合 ⇒ 欠陥のある目的物が引き渡された
数量に関する不適合 ⇒ 数量不足の目的物が引き渡された
権利に関する不適合 ⇒ 目的物の利用が制限されている又は一部他人物売買など
※全部他人物売買は、権利に関する契約不適合ではないので、債務不履行の一般規定で処理する。

<買主の救済手段>
追完請求、代金減額請求 ⇒ 買主に帰責事由が無いことが必要
契約解除 ⇒ 買主に帰責事由が無いことが必要(債務不履行だから)
損害賠償請求 ⇒ 売主に帰責事由があることが必要(債務不履行だから)


(買主の追完請求権)
第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第565条 前3条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。

(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(催告による解除)
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。

<時効>
種類、品質に関する契約不適合責任
⇒ 契約不適合を知った時から1年(民566)、引渡し時から10年(一般原則)
数量に関する契約不適合責任、権利に関する契約不適合責任
⇒ 契約不適合を知った時から5年(一般原則)、引渡し時から10年(一般原則)


(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

契約不適合責任は任意規定なので、免責特約も可能。

(担保責任を負わない旨の特約)
第572条 売主は、第562条第1項本文又は第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

<特定物の引渡しによる危険の移転>
双方に帰責事由なし ⇒ 危険は買主に移転(契約不適合責任追及✖、代金支払拒絶✖)
売主に帰責事由あり ⇒ 危険は売主が負担(契約不適合責任追及〇、代金支払拒絶〇、反対解釈による)
買主に帰責事由あり ⇒ 危険は買主に移転(契約不適合責任追及✖、代金支払拒絶✖)


※これは引渡し以後の話。契約後引渡し前は危険負担等で処理する。

(目的物の滅失等についての危険の移転)
第567条 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
2 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。

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京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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