信託法条文 第三章 受託者等(受託者の変更)
信託法条文 第三章 受託者等(受託者の変更)
第五節 受託者の変更等
第一款 受託者の任務の終了
(受託者の任務の終了事由)
第56条 受託者の任務は、信託の清算が結了した場合のほか、次に掲げる事由によって終了する。ただし、第二号又は第三号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一 受託者の死亡
二 受託者の後見開始又は保佐開始の審判
三 受託者の破産手続開始の決定
四 受託者である法人の合併以外の解散
五 第57条による受託者の辞任
六 第58条による受託者の解任
七 信託行為において定めた事由
2~7(省略)
(受託者の辞任)
第57条 受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 受託者は、やむを得ない事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
3~6(省略)
(受託者の解任)
第58条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができる。
2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に受託者を解任したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
3 前2項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4~8(省略)
第二款 前受託者の義務等
(前受託者の通知及び保管の義務等)
第59条 第56条第1項第三号から第七号までに掲げる事由(破産、解散、辞任、解任、定めた事由)により受託者の任務が終了した場合には、受託者であった者は、受益者に対し、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 第56条第1項第三号(破産)に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、破産管財人に対し、信託財産に属する財産の内容及び所在、信託財産責任負担債務の内容その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない。
3 第56条第1項第四号から第七号までに掲げる事由(解散、辞任、解任、定めた事由)により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新たな受託者が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その義務を加重することができる。
4 前項の規定にかかわらず、第56条第1項第五号に掲げる事由(辞任)(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き受託者としての権利義務を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
5 第3項の場合(前項本文に規定する場合を除く。)において、前受託者が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、前受託者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
(前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等)
第60条 第56条第1項第一号又は第二号に掲げる事由(死亡、後見)により受託者の任務が終了した場合において、前受託者の相続人(法定代理人が現に存する場合にあっては、その法定代理人)又は成年後見人若しくは保佐人(前受託者の相続人等)がその事実を知っているときは、前受託者の相続人等は、知れている受益者に対し、これを通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 第56条第1項第一号又は第二号に掲げる事由(死亡、後見)により受託者の任務が終了した場合には、前受託者の相続人等は、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
3 前項の場合において、前受託者の相続人等が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、これらの者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
4~6(省略)
第61条(省略)
第三款 新受託者の選任
第62条 第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、信託行為に新たな受託者(新受託者)に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより新受託者となるべき者として指定された者が信託の引受けをせず、若しくはこれをすることができないときは、委託者及び受益者は、その合意により、新受託者を選任することができる。
2 第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、信託行為に新受託者となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、新受託者となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
3 前項の規定による催告があった場合において、新受託者となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者及び受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはその1人)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
4 第1項の場合において、同項の合意に係る協議の状況その他の事情に照らして必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、新受託者を選任することができる。
5~8(省略)
第四款 信託財産管理者等
(信託財産管理命令)
第63条 第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が選任されておらず、かつ、必要があると認めるときは、新受託者が選任されるまでの間、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託財産管理者による管理を命ずる処分(信託財産管理命令)をすることができる。
2~4(省略)
第64条~第73条(省略)
(受託者の死亡により任務が終了した場合の信託財産の帰属等)
第74条 第56条第1項第一号に掲げる事由(死亡)により受託者の任務が終了した場合には、信託財産は、法人とする。
2 前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託財産法人管理人による管理を命ずる処分(信託財産法人管理命令)をすることができる。
3 第63条第2項から第4項までの規定は、前項の申立てに係る事件について準用する。
4 新受託者が就任したときは、第1項の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
5 信託財産法人管理人の代理権は、新受託者が信託事務の処理をすることができるに至った時に消滅する。
6 第64条の規定は信託財産法人管理命令をする場合について、第66条から第72条までの規定は信託財産法人管理人について、それぞれ準用する。
第五款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等
(信託に関する権利義務の承継等)
第75条 第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が就任したときは、新受託者は、前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
2 前項の規定にかかわらず、第56条第1項第五号に掲げる事由(辞任)(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合(第59条第4項ただし書の場合を除く。)には、新受託者は、新受託者等が就任した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
3 前2項の規定は、新受託者が就任するに至るまでの間に前受託者、信託財産管理者又は信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
4~9(省略)
(承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任)
第76条 前条第1項又は第2項の規定により信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合にも、前受託者は、自己の固有財産をもって、その承継された債務を履行する責任を負う。ただし、信託財産に属する財産のみをもって当該債務を履行する責任を負うときは、この限りでない。
2 新受託者は、前項本文に規定する債務を承継した場合には、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
(前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等)
第77条 新受託者等が就任した場合には、前受託者は、遅滞なく、信託事務に関する計算を行い、受益者に対しその承認を求めるとともに、新受託者等が信託事務の処理を行うのに必要な信託事務の引継ぎをしなければならない。
2 受益者が前項の計算を承認した場合には、同項の規定による当該受益者に対する信託事務の引継ぎに関する責任は、免除されたものとみなす。ただし、前受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
3 受益者が前受託者から第1項の計算の承認を求められた時から1箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者は、同項の計算を承認したものとみなす。
(前受託者の相続人等又は破産管財人による新受託者等への信託事務の引継ぎ等)
第78条 前条の規定は、第56条第1項第一号又は第二号に掲げる事由(死亡、後見)により受託者の任務が終了した場合における前受託者の相続人等及び同項第三号に掲げる事由(破産)により受託者の任務が終了した場合における破産管財人について準用する。
第六節 受託者が2人以上ある信託の特例
(信託財産の合有)
第79条 受託者が2人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする。
(信託事務の処理の方法)
第80条 受託者が2人以上ある信託においては、信託事務の処理については、受託者の過半数をもって決する。
2 前項の規定にかかわらず、保存行為については、各受託者が単独で決することができる。
3 前2項の規定により信託事務の処理について決定がされた場合には、各受託者は、当該決定に基づいて信託事務を執行することができる。
4 前3項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合には、各受託者は、その定めに従い、信託事務の処理について決し、これを執行する。
5 前2項の規定による信託事務の処理についての決定に基づく信託財産のためにする行為については、各受託者は、他の受託者を代理する権限を有する。
6 前各項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
7 受託者が2人以上ある信託においては、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。ただし、受益者の意思表示については、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第81条~第87条(省略)