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信託法条文 第七章 信託の終了及び清算

第一節 信託の終了

(信託の終了事由)
第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。
一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。
三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。

四 受託者が第52条(信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置)の規定により信託を終了させたとき。
五 信託の併合がされたとき。
六 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。
七 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
八 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。
九 信託行為において定めた事由が生じたとき。

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
3 前2項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。

第165条~第174条(省略)

第二節 信託の清算

(清算の開始原因)
第175条 信託は、当該信託が終了した場合(第163条第五号に掲げる事由によって終了した場合及び信託財産についての破産手続開始の決定により終了した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)には、この節の定めるところにより、清算をしなければならない。

(信託の存続の擬制)
第176条 信託は、当該信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。

(清算受託者の職務)
第177条 信託が終了した時以後の受託者(清算受託者)は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 信託財産に属する債権の取立て及び信託債権に係る債務の弁済
三 受益債権(残余財産の給付を内容とするものを除く。)に係る債務の弁済
四 残余財産の給付

(清算受託者の権限等)
第178条 清算受託者は、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 清算受託者は、次に掲げる場合には、信託財産に属する財産を競売に付することができる。
一 受益者又は第182条第1項第二号に規定する帰属権利者(受益者等)が信託財産に属する財産を受領することを拒み、又はこれを受領することができない場合において、相当の期間を定めてその受領の催告をしたとき。
二 受益者等の所在が不明である場合
3 前項第一号の規定により信託財産に属する財産を競売に付したときは、遅滞なく、受益者等に対しその旨の通知を発しなければならない。
4 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、第2項第一号の催告をしないで競売に付することができる。

(清算中の信託財産についての破産手続の開始)
第179条 清算中の信託において、信託財産に属する財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算受託者は、直ちに信託財産についての破産手続開始の申立てをしなければならない。
2 信託財産についての破産手続開始の決定がされた場合において、清算受託者が既に信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に支払ったものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。

(条件付債権等に係る債務の弁済)
第180条 清算受託者は、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済することができる。この場合においては、これらの債権を評価させるため、裁判所に対し、鑑定人の選任の申立てをしなければならない。
2 前項の場合には、清算受託者は、同項の鑑定人の評価に従い同項の債権に係る債務を弁済しなければならない。
3~6(省略)

(債務の弁済前における残余財産の給付の制限)
第181条 清算受託者は、第177条第二号及び第三号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第2項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただし、当該債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。

(残余財産の帰属)
第182条 残余財産は、次に掲げる者に帰属する。
一 信託行為において残余財産の給付を内容とする受益債権に係る受益者(残余財産受益者)となるべき者として指定された者
二 信託行為において残余財産の帰属すべき者(帰属権利者)となるべき者として指定された者
2 信託行為に残余財産受益者若しくは帰属権利者(残余財産受益者等)の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合には、信託行為に委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなす。
3 前2項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、残余財産は、清算受託者に帰属する。

(帰属権利者)
第183条 信託行為の定めにより帰属権利者となるべき者として指定された者は、当然に残余財産の給付をすべき債務に係る債権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 第88条第2項の規定は、前項に規定する帰属権利者となるべき者として指定された者について準用する。
3 信託行為の定めにより帰属権利者となった者は、受託者に対し、その権利を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、信託行為の定めにより帰属権利者となった者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。
4 前項本文に規定する帰属権利者となった者は、同項の規定による意思表示をしたときは、当初から帰属権利者としての権利を取得していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。
5 第100条及び第102条の規定は、帰属権利者が有する債権で残余財産の給付をすべき債務に係るものについて準用する。
6 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

(清算受託者の職務の終了等)
第184条 清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者及び帰属権利者(受益者等)のすべてに対し、その承認を求めなければならない。
2 受益者等が前項の計算を承認した場合には、当該受益者等に対する清算受託者の責任は、免除されたものとみなす。ただし、清算受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
3 受益者等が清算受託者から第1項の計算の承認を求められた時から1箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者等は、同項の計算を承認したものとみなす。

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