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合同会社における社員の退社の2類型

会社法上の退社事由(任意退社や法定退社)で、会社の存続中に特定の社員の社員資格が絶対的に消滅することを「狭義の退社」、会社法上の退社事由に加えて、持分の全部譲渡に伴い社員としての地位を喪失することを含めて「広義の退社」と呼びます。

狭義の退社と持分の全部譲渡との区別は、退社時に持分の払戻し等が必要かどうかという点や社員権の絶対的消滅を生じさせるかどうかという点等が異なる。
狭義の退社においては、持分(社員権)そのものが消滅するため、社員数及び出資総額が確定的に減少するのに対して、持分の全部譲渡においては、持分自体は消滅しないことから、社員数が減少したり、分散譲渡により社員数が増加したりすることはあっても、出資総額には変動が生じない。

持分の全部譲渡の場合には、会社法上の社員の退社に関する規定(606~613条)は適用されず、持分の譲渡に関する規定(585~587条)が適用される。

(持分の譲渡)
第585条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
3 第637条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
4 前3項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
(持分の全部の譲渡をした社員の責任)
第586条 持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
2 前項の責任は、同項の登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する。
第587条 持分会社は、その持分の全部又は一部を譲り受けることができない。
2 持分会社が当該持分会社の持分を取得した場合には、当該持分は、当該持分会社がこれを取得した時に、消滅する。

(任意退社)
第606条 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、6箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 前2項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
(法定退社)
第607条 社員は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
2 持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。
(相続及び合併の場合の特則)
第608条 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
2 第604条第2項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
3 第1項の定款の定めがある場合には、持分会社は、同項の一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす。
4 第1項の一般承継人(相続により持分を承継したものであって、出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないものに限る。)が2人以上ある場合には、各一般承継人は、連帯して当該出資に係る払込み又は給付の履行をする責任を負う。
5 第1項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が2人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者1人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
(持分の差押債権者による退社)
第609条 社員の持分を差し押さえた債権者は、事業年度の終了時において当該社員を退社させることができる。この場合においては、当該債権者は、6箇月前までに持分会社及び当該社員にその予告をしなければならない。
2 前項後段の予告は、同項の社員が、同項の債権者に対し、弁済し、又は相当の担保を提供したときは、その効力を失う。
3 第1項後段の予告をした同項の債権者は、裁判所に対し、持分の払戻しの請求権の保全に関し必要な処分をすることを申し立てることができる。
(退社に伴う定款のみなし変更)
第610条 第606条、第607条第1項、前条第1項又は第642条第2項の規定により社員が退社した場合(第845条の規定により社員が退社したものとみなされる場合を含む。)には、持分会社は、当該社員が退社した時に、当該社員に係る定款の定めを廃止する定款の変更をしたものとみなす。
(退社に伴う持分の払戻し)
第611条 退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる。ただし、第608条第1項及び第2項の規定により当該社員の一般承継人が社員となった場合は、この限りでない。
2 退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。
3 退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
4 退社の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。
5 社員が除名により退社した場合における第2項及び前項の規定の適用については、これらの規定中「退社の時」とあるのは、「除名の訴えを提起した時」とする。
6 前項に規定する場合には、持分会社は、除名の訴えを提起した日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
7 社員の持分の差押えは、持分の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。
(退社した社員の責任)
第612条 退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
2 前項の責任は、同項の登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する。
(商号変更の請求)
第613条 持分会社がその商号中に退社した社員の氏若しくは氏名又は名称を用いているときは、当該退社した社員は、当該持分会社に対し、その氏若しくは氏名又は名称の使用をやめることを請求することができる。

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京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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