信託の追加をするには?
信託の追加をするには?
信託の追加の法的性質について、新たな信託設定と信託の併合を同時に行うものと考えると、
cf. 信託の対象財産と、遺言との併用
信託設定は、委託者と受託者との間で契約を締結する必要があり、
信託の併合は、委託者、受託者及び受益者の合意(自益信託の場合は、委託者兼受益者と受託者との合意)、受託者及び受益者の合意、受託者の書面によってする意思表示、別段の定めのいずれかに従うことになります。
実務上は、信託の追加に関する条項を規定しておき、追加の際に、委託者と受託者との間で合意し、信託の追加を行うことが一般的です。信託の追加の法的性質に鑑みると、委託者の一方的な行為によって行うことはできないと解することになります。
また、委託者が死亡した際、委託者の相続人による信託の介入を認めないことが望ましい場合もあるので、実務上、「委託者の死亡によって委託者の権利は消滅し、委託者の地位に基づく権利は相続人に承継されない。」というような委託者の権利の消滅条項を置くことがありますが、その場合、信託の追加をする権利もこの委託者の権利に含まれるので、委託者の相続人は、追加信託をすることができません。
なお、委託者の「地位」は、委託者の相続人が相続により当然に承継し(信託法147本文の反対解釈)、相続の一般原則により、これと異なる別段の定めは認められません。
(遺言信託における委託者の相続人)
第147条 遺言によって信託がされた場合には、委託者の相続人は、委託者の地位を相続により承継しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第二節 信託の併合
(関係当事者の合意等)
第151条 信託の併合は、従前の各信託の委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。一~五(省略)
2 前項の規定にかかわらず、信託の併合は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによってすることができる。この場合において、受託者は、第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、同項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面によってする意思表示
3 前2項の規定にかかわらず、各信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
(債権者の異議)
第152条 信託の併合をする場合には、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、信託の併合について異議を述べることができる。ただし、信託の併合をしても当該債権者を害するおそれのないことが明らかであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により同項の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、受託者は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、同項の債権者で知れているものには、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第二号の期間は、1箇月を下ることができない。一~三(省略)
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司法書士 山森貴幸