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低額譲渡の課税関係

① 個人→個人 
売主:売買代金を譲渡収入として譲渡所得税
買主:時価と売買代金の差額は、みなし贈与

相続税法上、著しく低い価額であるかは、個々の具体的事案に基づき判定する。
この判定基準は、所得税法上の基準である時価の2分の1未満とは異なる。
時価に比べて低い価額であっても、みなし贈与課税の対象とならない。

相続税評価額以上の価額なら、原則として著しく低い価額ではない。(東京地判平19.8.23)
cf. No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき|国税庁


② 個人→法人 
売主:みなし譲渡所得税(時価譲渡みなし)
買主:法人税(時価と売買代金の差額は、受贈益)

所得税法上、著しく低い価額の基準は、時価の2分の1未満である。
この場合の時価は、相続税法上の時価ではなく、所得税法上の時価が適用される。
つまり、路線価ではなく、通常の取引価格が時価となる。

買主が同族会社で株式価値が増加した場合、増加部分について売主から贈与を受けたものとして支配株主に贈与税が課税される可能性がある。


③ 法人→個人 
売主:法人税(売買代金で譲渡益課税、時価と売買代金の差額は、寄付金又は賞与で損金不算入対象)
買主:時価と売買代金の差額は、一時所得(寄付金、他人)、給与所得(賞与、役員or従業員)

この場合の所得税は、譲渡価額が著しく低い場合だけでなく、単に時価より低い場合にも適用される。
cf. 所得税法基本通達36-15(経済的利益)


④ 法人→法人 
売主:法人税(売買代金で譲渡益課税、時価と売買代金の差額は、寄付金で損金不算入対象)
買主:法人税(時価と売買代金の差額は、受贈益)

買主が同族会社で株式価値が増加した場合、増加部分について売主から利益を受けたものとして支配株主に所得税等が課税される可能性がある。
売主の損金不算入と買主の受贈益で、二重課税となる。


相続税法
(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
第7条 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があった時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があった時における当該財産の時価との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

所得税法
(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
第59条 次に掲げる事由により譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その者の譲渡所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
所得税法施行令
(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)
第169条 法第59条第1項第二号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする。

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プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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