賃借人が原状回復義務を履行しないときは、債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。(最判平17.3.10)
(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
最判平17.12.16
賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。
それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。
<修繕義務特約との対応条項例>
(修繕)
第●条 本物件の使用に伴い通常必要となる軽微な修繕及び乙の責めに帰すべき事由により必要となった修繕は、乙の費用負担において行う。
2 前項に定める場合を除き、本物件の構造部分、主要設備その他本物件の維持保全に必要な修繕は、甲の費用負担と責任において行う。
(原状回復)
第●条 乙は、本契約が終了したときは、自己の費用と責任において本物件を原状に回復し、甲に明け渡さなければならない。ただし、通常損耗及び経年変化による部分並びに第●条第2項により甲が負担すべき修繕に対応する部分については、この限りでない。
2 乙は、前項の原状回復に当たり、自己が設置した内装、設備、什器備品その他の動産を自己の費用と責任において撤去しなければならない。
3 乙が前2項の義務を履行しないときは、乙は、本物件の使用の有無にかかわらず、明渡し完了に至るまで、本契約終了時の賃料の倍額に相当する損害金を甲に支払わなければならない。
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司法書士 山森貴幸