従業員を雇用する際に、その従業員について身元保証人を求める場合があります。
この身元保証人の責任の範囲などを定めている法律が、身元保証に関する法律です。
賃貸借契約を締結する際に貸主が借主に身元保証人を求める場合 や 病院・老人ホームに入院・入所する際などに病院・施設側から利用者に対して身元保証人を求める場合 などは、この身元保証に関する法律の対象とはされていません。
昭和8年法律第42号(身元保証に関する法律)
第1条 引受、保証その他名称の如何を問わず期間を定めずして被用者の行為に因り使用者の受けたる損害を賠償することを約する身元保証契約はその成立の日より3年間その効力を有す。但し商工業見習者の身元保証契約に付ては之を5年とす。
第2条 身元保証契約の期間は5年を超ゆることを得ず。もし之より長き期間を定めたるときはその期間は之を5年に短縮す。
② 身元保証契約は之を更新することを得。但しその期間は更新の時より5年を超ゆることを得ず。
第3条 使用者は左の場合に於ては遅滞なく身元保証人に通知すべし。
一 被用者に業務上不適任又は不誠実なる事跡ありて之が為身元保証人の責任を惹起する虞あることを知りたるとき
二 被用者の任務又は任地を変更し之が為身元保証人の責任を加重し又はその監督を困難ならしむるとき
第4条 身元保証人前条の通知を受けたるときは将来に向て契約の解除を為することを得。身元保証人自ら前条第一号及第二号の事実ありたることを知りたるとき亦同じ。
第5条 裁判所は身元保証人の損害賠償の責任及その金額を定むるに付被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証を為すに至りたる事由及之を為すに当リ用ヰたる注意の程度、被用者の任務又は身上の変化その他一切の事情を斟酌す。
第6条 本法の規定に反する特約にして身元保証人に不利益なるものは総て之を無効とす。
注意しないといけないのは、身元保証人としての地位は相続されません。
身元保証人は、当事者同士の信頼関係によって成り立つ関係であるため、当事者でない相続人にとっては、身元保証人としての責任は果たせないからです。
大審院昭和2年7月4日判決でも、身元保証人の地位は被相続人の一身に専属する地位(一身専属権)であり、特段の事情のない限り、相続人に引き継がれないとしています。
ただし、身元保証人が生きている間に、すでに具体的に損害賠償債務(身元保証債務)が発生していた場合には、これは具体的な金銭債務なので、当然相続の対象となります。
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京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸