預貯金債権は遺産分割の対象に含まれるので、預貯金債権は遺産分割するまでの間、各共同相続人に準共有される。
そうすると、遺産分割する前の時点で預貯金債権の払戻しを受けるには、共同相続人の全員による共同行使が必要となるが、相続債務の弁済や葬儀費用、被相続人から扶養を受けていた相続人の当面の生活費の捻出などのために緊急の預貯金の払戻しが必要となるような場合には、単独で預貯金債権の行使を認めて小口の資金需要に対応できるようにするのが国民の利便に資する。(完択 P759)
最大決平28.12.19
共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。
<出金できる金額の上限>
死亡時の預貯金残高(各口座ごと)の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額
ただし、同一の金融機関に対する権利行使は、150万円が限度
(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令
民法第909条の2の規定に基づき、同条に規定する法務省令で定める額を定める省令を次のように定める。
民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。
なお、150万円では足りない場合は、家庭裁判所の保全処分(遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分)の申立てを検討する。
家事事件手続法
(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)
第200条3項 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。
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司法書士 山森貴幸