農地について売買契約が成立しても農地法許可がなければ所有権は移転せず、つまり、契約の時点で買主には農地の所有権はなく、許可により初めて所有権を取得することになるので、農地法許可申請協力請求権は、農地所有権に基づく物権的請求権であるということはできず、また、農地の所有権に基づく登記請求権に随伴する権利であるともいえない。
すなわち、農地法許可申請協力請求権は、売買契約に基づく債権的請求権である。
よって、売買契約の当事者以外の者を拘束することはできないし、債権の消滅時効が売買契約成立日から起算される。
cf. 民法改正後(現行)の債権の消滅時効
・農地法許可を条件とする農地の売買契約において、「これを転売したときには売主は直接転買人のためにその許可申請手続をする」旨の合意をしても、その合意は効力を生じない。(最判昭38.11.12)
・農地の買主が農地を転売した場合に、転買人が当初の売主に対して直接農地法第5条所定の知事に対する許可申請手続を求めることは許されない。(最判昭46.4.6)
・甲が、乙との間に、農地法第5条所定の知事の許可を条件として乙所有の農地を買い受ける契約をし、これに基づいて所有権移転請求権保全の仮登記を経由し、次いでその売買契約上の買主たる地位を丙に譲渡して、その仮登記につき丙への移転の附記登記をした場合において、
丙が、当該譲渡につき乙の承諾を得、乙との間に、乙において丙のため宅地転用の許可申請手続をなすべく、許可があったときは丙に所有権移転登記手続をする旨の合意をしたときは、この合意は有効であり、これに基づく丙の権利は、当初の甲乙間の売買契約に基づいて成立したものとして、その仮登記により保全されているものと解すべきである。(最判昭46.6.11)乙→甲→丙
農地・森林に関する法律と実務 P187-190
cf. 農地の転売
cf. 2号仮登記の物権的移転後の本登記の農地法許可書
cf. 第三者のためにする契約の備忘録
甲乙間の売買契約書で特約を入れようと思っても、
売主は、買主が本物件を転売する目的で購入することを承諾する。また、現実に転売した際、その転買人に対し、本物件の条件付所有権の譲渡に関して承諾をするとともに、転買人のために農地法許可申請に協力し、許可を得たときは直接転買人に対し所有権移転登記手続をする旨合意する。
ぐらいしか記載できないか。記載しても法的には意味が無いかもしれませんが。
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司法書士 山森貴幸