遺言執行者とは、遺言者の意思の実現を図るための職務にあたるものであるため、本来は遺言者の代理人としての立場を有するものであるが、改正前民法では「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」との規定となっていたことから、遺言執行者の法的地位をめぐっては、学説上の対立もあり、訴訟等のトラブルに発展する例も少なくなかった。(遺言執行者の実務 P119)
例えば、遺言の内容が、相続人以外の人へ財産を遺贈する、というような場合、遺言執行者の立場は相続人の利益と相反することになり、遺言執行者と相続人との間で利害対立が生じる可能性がありました。
そこで、改正民法では、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると定められ、また、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずると規定されました。これにより、遺言執行者は相続人の代理人ではなく、遺言者の意思を実現する独立した法的地位を得たといえます。
<追記>
改正前の考え方として、遺言執行者は、本来「遺言者の代理人」と捉えることが実態にかなっているが、死者である遺言者は権利義務の主体とはなり得ないことから、遺言者の権利義務を包括的に承継する「相続人の代理人」とされた。しかし、相続人の代理人とみなす旨の規定があるからといって、必ずしも相続人の利益のためにのみ行為すべき責務を負うものとは解されないとするのが判例(最判昭30.5.10)であり、「相続人の代理人とみなす」という規定から、遺言執行者は相続人のために活動すべきものだという誤解が生じているとの指摘もあることから、「相続人の代理人」という規定の実質的な意味である、遺言執行者の行為の効果が相続人に直接帰属するとの内容に改正された。(遺言執行実務マニュアル P3)
(遺言執行者の権利義務)
第1012条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
(遺言執行者の行為の効果)
第1015条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
(遺言執行者の地位) 改正前
第1015条 遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
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司法書士 山森貴幸