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意思無能力者に代わって相続税申告をした判例

被相続人が父で、子Aが意思無能力者である母に代わって相続税の申告・納付をした。
子Aの相続人が、父の他の相続人である子Bらに、事務管理に基づく費用償還請求をした。

この判例は、意思無能力者に代わって相続税申告をした行為の有効性は問題とされておらず、事案によっては、無権代理に該当して無効となる可能性があります。後見人制度を利用するなどの対応をオススメします。

cf. 事務管理の要件

高裁の判断
 後見人が選任された日から申告義務が生じるので、後見人が選任されていない本件については、申告義務が発生していない。そして、相続税法35条2項1号は意思無能力者には適用されないと解されるから、被相続人死亡日の翌日から10か月を経過しても、税務署長は同号に基づいて税額を決定することはない(申告義務が発生していないので、35条2項1号の「第27条第1項に規定する事由に該当する場合において、」に当てはまらない)。
そうすると、本件申告は、母の利益に適うものであったと認めることはできず、かえって納税義務を生じさせるという不利益なものであったと認められるので、事務管理に基づく費用償還請求を棄却した。

<最高裁(最判平18.7.14)>
 意思無能力者であっても、納付すべき相続税額がある以上、後見人の有無にかかわらず、申告義務は発生しており、後見人がないときは、その期限が到来しないというにすぎない(申告期限の起算点という意味しか持たない)。
また、相続税法35条2項1号は、相続税の申告期限が相続人の認識に基づいて定まり、税務署長がこれを知ることは容易でないにもかかわらず、徴収権の消滅時効などが起算されることを考慮し、税の適正な徴収という観点から国税通則法25条の特則として設けられたものであるから、相続人の主観によって決まる申告期限と無関係に、被相続人死亡日の翌日から10か月の経過により、税務署長に相続税額の決定権限を認めたものと解すべきであり、同号は、意思無能力者に対しても適用される。
よって、本件申告が母の利益に適うものではなかったということはできず、事務管理に基づく費用償還請求を直ちに否定することはできない。

(相続税の申告書)
第27条 相続又は遺贈により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格に係る(省略)の規定による相続税額があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

相続税法基本通達27-4
法第27条第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために相続の開始があったことを知った日をいうのであるが、例えば、次に掲げる者については、次に掲げる日をいうものとして取り扱うものとする。
⑺ 相続開始の事実を知ることのできる弁識能力がない幼児等 法定代理人がその相続の開始のあったことを知った日(相続開始の時に法定代理人がないときは、後見人の選任された日

(更正及び決定の特則)
第35条2項 税務署長は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、申告書の提出期限前においても、その課税価格又は相続税額若しくは贈与税額更正又は決定をすることができる。
一 第27条第1項に規定する事由に該当する場合において、同条第1項に規定する者の被相続人が死亡した日の翌日から10月を経過したとき。

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プラスカフェ 相続
京都市左京区 設立
司法書士 山森貴幸

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